生い茂る森の詩

考えたことをポツポツと詩や文章にして。

幻を見せた人

 

色づいては落ちる銀杏並木 仰ぎ眺めて
もう冬になりますねとため息ついた

 

きっと春になれば青々と葉がつくから
楽しみに待とうと微笑んで見せた

 

あの日は嘘でしたか
それとも私の夢でしたか
あの声は 目は
あの優しいぬくもりは
ふいに俯いたあなたの横顔は
どこか悲しそうに見えた

 

足跡をかたどった 溶けかけの雪は
おろしたての靴に まとわりつく

 

すべらないようにね 背中に低い声
ふりむき見えたのは 白い息の後

 

あれは幻ですか
それともあなたの言葉
あの日々は あなたとの思い出は
いつの間に雪は雨にかわって
私の頰 濡らしていた

 

美しい恋と呼ぶには少しだけ
あなたに何かを 求めすぎていた

 

『幻を見せた人』