生い茂る森の詩

考えたことをポツポツと詩や文章にして。

にわか夢

 

降りしきる雨は 指に食い込む手提げを濡らし
今夜の夕飯考えながら 足早に弾く水溜り

 

ふいに横道 視線を移せば
懐かしい姿 見えてしまった

 

今日はその人 その道 通る日
わかっていたの わかっていたの
見つけた途端 傘を斜めに
私の顔は 見せぬように隠す

 

降り止まぬ雨は 私の肩を撫でて
雫散らしながら 振り切る記憶

 

ふいに後ろを 振り返っても
懐かしい姿 跡形もなく

 

明日はその人 知らずに 生きる日
わかっていたの わかっていたの
蘇った束の間 手を胸に当てて
泣き出す心臓 見えぬように隠す

 

『にわか夢』