生い茂る森の詩

考えたことをポツポツと詩や文章にして。

瞬きの恋

 

顔は足元に向けて 視線は指先に

そして時々私はこっそりと

あなたの顔を見つめていた

 

そわそわと落ち着かないのは私だけで

あなたはまっすぐと私の目を見て話している

 

不意に声が途切れるとまた

腕時計の針が急かすように音を立てる

 

あなたのそばにいるこの一瞬が

少しでも長く続くように

ハテナで返して 曖昧に笑って

悩んでいるふりなんかして私はまた

あなたの言葉を待っている

 

通り過ぎる人の波 髪を撫でる夜の風

あなたは時々それを追っては

目を泳がせて 私を見る

 

そわそわと落ち着かなくなって来たあなたは

そのつま先を駅の方へ向けている

 

会話にピリオド打たれたの感じて

私はやっと腕時計に目をやった

 

あなたのそばにいるこの一瞬が

少しでも長く続くように

香水をつけて 口紅を変えて

似合わない服なんか着て私はまた

あなたに期待してしまっている

 

あなたのそばにいるこの一瞬が

少しでも迷惑にならないように

無理に笑って 声色を変えて

つまらない冗談言って私はまた

あなたの優しさに甘えている

 

『瞬きの恋』