生い茂る森の詩

考えたことをポツポツと詩や文章にして。

面影


胸に焦げついた記憶
忘れられずにいるのは
誰かが憎いとか 恨めしいとか
そういうことではなくて

 

心を許した自分が
不用意なことをこぼした自分が
泣き虫だった自分が
期待して止まなかった自分が
あまりにも幼くて
あまりにも痛々しくて
そしてまたそれに引きずられる今の自分さえ
憎くて苦しくて仕方がないからなんだ

 

いつだってわからないのは自分の心で
いつだって信じられないのは自分の言葉だ
誰かのせいにして逃れるならそれで楽かもしれない
状況が、周りの目が、あの人の言葉が、
僕をこんなに傷つけたんだと言えるんだったら

 

でも今はもうそんなことも
できないくらいどん底に落ちたんだ
夢を忘れ 希望に捨てられ
誰も信じられなくなった僕にとって
唯一信じなきゃいけないのは自分自身なのだと
今更気づいたんだ もう遅いのかな

 

『面影』

良い子のうた

 

隣を歩く姿を見れば
確かに私は幸せ者で
周りにいる人みんなの目線
横目で見ては喜んでいた

 

ある日の廊下 曲がり角の先
薄暗いそこにいたのは彼で
正面 立っていたのはあの子
涙がキラキラ光って落ちた

 

声をかけずに通り過ぎたのは
なんだか近づける雰囲気じゃなかった
そんな訳ない

 

気づいていた あの子が今
かわいい小包 渡していたこと
気づいていて 足音をたてて歩いた
まるで私が 一番素敵な人みたいに

 

ハンカチ握った うつむいた背中
見送る彼を 遠くで見ていた
片手には紙袋 あの中にはきっと
私の知らない 夢があるのだろう

 

声をかけずに戸を閉じたのは
あの子に申し訳立たないから
そんな訳ない

 

気づいていた あの子が今
どこかで一人 泣いていること
気づいていて 笑っていた
まるで私が 一番可哀想なふりして

 

帰り路 待っていてくれた
彼の手には 何もなかった
変わらず笑いかける人に
私はいつもより 強く 長く
抱きついたんだ

 

気づいていた 私はただ
誰より前を歩きたかったこと
気づいていて 素知らぬふりで
彼の腕に しがみついて歩いた

 

『良い子のうた』

走者

 

一人で生きる覚悟を決めた
もう誰もいらない
誰も信じない
そう言って蹴った空き缶は
音も立てずにどこかへ飛んでいった

 

誰も止める人などいないさ
集団離れていく奴なんか


言葉待っているのは無駄だ
舌打ちしても意味はないから
何も言わずに走り出した

 

自分勝手だ おかしな奴だ

囁く声と冷たい視線
飛んでくる矢はもろに当たって
引き抜けば血が溢れ流れた

 

どこへ行くかはわからない
そんなの誰にも決められない
傷だらけの足 振り切る涙
失うものなどもうないくらいに
守るものなど1つもなかった
それでも走ると僕は決めた
一人で走ると僕は決めた

 

ときどきふと蘇る記憶

はじける笑顔 抱きしめ合った日
思い出なんて1つもないと
言ったら確かに嘘かもしれない

 

だが過去を振り返って立ち止まるのは
未来を捨てるのと同じことだ
今を生きぬのと同じことだ
過去に語りかけても意味はないから
前だけを見て生きることにした

 

薄情な奴だ 裏切り者め

背中にとんできた言葉の刃
どこにも居場所が無いのなら
僕が生きるここを居場所にするよ

 

誰も止める人などいないさ

今ではそれが好都合なんだ

 

どこがゴールかはわからない
そんなもの初めからないのかもしれない
向かい風に吹かれ 登り坂ばかりで
それでも走ると僕は決めた
一人で走ると僕は決めた

 

『走者』

うたかたの声

 

落ち込んでると泣いた文面
赤らむ頬は 寒いからじゃない
勇気を出すときだ
あなたが呼んでいる
指が震えていたのは
緊張を隠せなかったから

 

足踏みしながら 手袋握って
耳に押し付ける あなたの名前
3回目のコール 答える低い声
上ずった声は 白くなって宙に浮く

 

あの夜となりに誰かがいると
教えてくれなかったのは なぜ
雪が涙に溶けていった
私の言葉を あなたが
待っていたわけないでしょう

 

元気づけたいと笑ってみせた
夜空がかき消す 私の叫び
軽やかに言うんだ
きっと大丈夫
足踏み止めないのは
不安を消したいから

 

あの夜 私に本当のことを
教えてくれなかったのは なぜ
悲しい夢だと わからずにいた
私のことを あなたが
愛していたわけないでしょう

 

あの夜 私が本当のことに
気づけなかったのは なぜ
優しい言葉で 包みこんだ
あなたの嘘を 私は
疑えたわけないでしょう

 

『うたかたの声』

勝手な奴らばっかりだ

 

勝手な奴らばっかりだ
勝手な奴らばっかりだ

 

私は何を言ってもいいの
あなたは何も言っちゃダメ
批判 ご意見 受け付けません
あなたの考え 認めません

 

私は 公正 公平 謙虚
あなたは 身勝手 自由で 奔放

そう決めたがる「私」の方が
自分勝手じゃないかしら

 

勝手な奴らばっかりだ
勝手な奴らばっかりだ
本当に勝手な奴らは そうさ
自分の勝手さ気づかない

 

私はあなたを評価するのよ
あなたに何も言われたくないわ
私は 私の理想があるの

 

美しい理想? ただのエゴじゃない

 

勝手な奴らばっかりだ
勝手な奴らばっかりだ
自分の価値観 他人に押し付け
それが善だと 思ってる

 

勝手な奴らばっかりだ
勝手な奴らばっかりだ
自分の弱さを隠していたくて
他人を貶め 非難する

 

『勝手な奴らばっかりだ』

にわか夢

 

降りしきる雨は 指に食い込む手提げを濡らし
今夜の夕飯考えながら 足早に弾く水溜り

 

ふいに横道 視線を移せば
懐かしい姿 見えてしまった

 

今日はその人 その道 通る日
わかっていたの わかっていたの
見つけた途端 傘を斜めに
私の顔は 見せぬように隠す

 

降り止まぬ雨は 私の肩を撫でて
雫散らしながら 振り切る記憶

 

ふいに後ろを 振り返っても
懐かしい姿 跡形もなく

 

明日はその人 知らずに 生きる日
わかっていたの わかっていたの
蘇った束の間 手を胸に当てて
泣き出す心臓 見えぬように隠す

 

『にわか夢』

 

君の王子さま

 

ただ 王子さまでいたかった
ただ 夢を見せてあげたかった
ただそれだけなんだ 許してくれよ

 

君は正面 オレンジジュース
僕はノンアル 烏龍茶のみ
とはいえ宴会 ウケ狙わなきゃ
君を笑わせ楽しんでいた

 

君は笑顔を絶やさずに
目を輝かせて 僕に言う
彼女はいるの?彼女は欲しい?
僕は迷わず頷いた

もちろん彼女は欲しいけれどさ
なかなかできない 出会いがない

 

本当のことは言えない言わない
君はかわいい 彼女より

 

ただ王子さまでいたかった
ただ夢を見せてあげたかった

ただそれだけなんだ 忘れてくれよ

 

君は優しく僕に言ったね
誰でもはじめは上手くできない
だけど時間(とき)こそ僕を強くする
あなたは必ず強くなるって

 

僕は耐えられずに言ってしまった
上目遣いで 微笑む君にさ

君の期待には答えられない
期待をさせてしまってごめん

 

みるみる涙が溢れる君に
気づいて今更 後悔したんだ

 

ただ 王子さまでいたかった
ただ 夢を見せてあげたかった
ただそれだけなんて 言えるだろうか

 

君は「さよなら」言わずに行った
僕はなんにも 言えずに見てた
甘えていたのは 僕の方だね
待っていたのは 僕の方だね

 

君の想いは忘れないのさ
僕を誰より 愛してくれた

 

ただ王子さまでいたかった
ただ夢を見せてあげたかった
ただそれだけなんだ 許してくれよ…

 

『君の王子さま』