生い茂る森の詩

考えたことをポツポツと詩や文章にして。

良い子のうた

 

隣を歩く姿を見れば
確かに私は幸せ者で
周りにいる人みんなの目線
横目で見ては喜んでいた

 

ある日の廊下 曲がり角の先
薄暗いそこにいたのは彼で
正面 立っていたのはあの子
涙がキラキラ光って落ちた

 

声をかけずに通り過ぎたのは
なんだか近づける雰囲気じゃなかった
そんな訳ない

 

気づいていた あの子が今
かわいい小包 渡していたこと
気づいていて 足音をたてて歩いた
まるで私が 一番素敵な人みたいに

 

ハンカチ握った うつむいた背中
見送る彼を 遠くで見ていた
片手には紙袋 あの中にはきっと
私の知らない 夢があるのだろう

 

声をかけずに戸を閉じたのは
あの子に申し訳立たないから
そんな訳ない

 

気づいていた あの子が今
どこかで一人 泣いていること
気づいていて 笑っていた
まるで私が 一番可哀想なふりして

 

帰り路 待っていてくれた
彼の手には 何もなかった
変わらず笑いかける人に
私はいつもより 強く 長く
抱きついたんだ

 

気づいていた 私はただ
誰より前を歩きたかったこと
気づいていて 素知らぬふりで
彼の腕に しがみついて歩いた

 

『良い子のうた』