彼女はゆっくりと泳いでいる
まるでこの世のすべてを見据えたかのように
白い肌には傷ひとつない
丸く小さな目は 子供のようにあどけない
しかし その大きなからだには
誰も近づかない 誰も触らない
周りを泳ぐのは小さな、小さな、魚たちだけ
彼女はゆっくりと泳いでいる
まるでひとりで生きているかのように
人魚のようだと人は言った
短いひれと丸い姿に癒されると人は言った
しかし その女神のごとき微笑みは
誰も見ていない 誰も気にしていない
彼女が進むのは前に、前に、ただそれだけ
彼女はゆっくりと泳いでいる
まるで悲しみも知らないかのように